思い立ったがなんとやら。
そう呟いた声に首を傾げながら、本から視線を外す。
「ねぇおチビさん」
「んだよ」
「リゼンブール連れてって」
「…は?」
後ろから聞こえてきた声に思わず振り返る。
不意にやってきたと思えば、変なことを言い出すやつだ。
「おチビさんが生まれて育った場所に行きたい」
「…なんでだよ」
「見てみたいんだ。色々」
ベットに寝転がって頬杖を突きながらぼんやり言った言葉に、がしがしと頭を掻いた。
なんだ急に、と言ったところでまともな返事はないだろうから、あー、と考えながら唸ってみる。
「…別にいいけど。楽しくなんかないぞ」
「楽しいよ」
「楽しくない」
「楽しいよ。だって小さい頃のおチビさんのこと知らないんだもん」
少しでいいから見てみたい、と言った。
そんなの知らなくていいだろ、とぼんやり思う。
あそこにはなにもない。
ただの田舎で、観光しても面白いものはないし。
「おチビさんの家とか」
「焼いたからもうない」
「それでいいよ」
「いやだ」
見たら思い出しそうで嫌だ。
母さんと一緒に暮らした頃と、禁忌を犯した日。
オレの汚いところ醜いところ全部があそこに置いてある。
見られたくない、と言いながら本に視線を戻すと、上半身を起こして後ろからぎゅうぎゅう抱き着いてきた。
「だからだよ。おチビさんのそういうところ全部知りたい」
「オレは絶対嫌だ。そんな格好悪いところ見せれるか」
「そんなことないよ」
「…お前になにが分かるんだ」
「分からないよ。だから知りたい」
分かってるふりして言ってるわけじゃないよ、とあっさり言われた。
ちょっと意外だったから、びっくりしてなにも言い返せなくなる。
裏表がないというか、素直なところはいいけれど。
「駄目?」
「…絶対つまらないからな」
「ううん。だいじょうぶ」
嬉しそうに笑われて、まぁいいか、と溜め息を吐いた。
アルとはいま時間短縮のために別行動してるし。
たしかいまは北に行ってるんだっけ。
「じゃあ明日だね」
「まじかよ。急だな」
「うん決定。思い立ったが吉日でしょ?」
「それだったら今日だろ」
「じゃあ今日でいいの?」
「…明日な」
「うん」
どっちにしろもう夜遅いし。
でもこいつならその気になればいまからでも「行こう」と言い出しそうで、仕方なく頷く。
それからはだらだらと他愛無い話をして、眠くなった頃に気を使ったのかエンヴィーは帰っていった。
ベットに潜り込んで眠って、数時間後にまたこいつはやってきた。
まだ寝ぼけているのに急かされて、簡単に朝食を食べてすぐ宿を出る。
明日、と約束はしたけどまさか昼前から出るなんて思っても無かったのに。
まだ眠気でぼうっとする頭のまま駅に向かった。
向こうに食べるところあったっけ、とか。昼飯どうしよう、とか色々思いながら
物珍しそうにしているエンヴィーを汽車に乗せて、リゼンブールへ向かう。
あぁ、なんでこんなことになったんだっけ。
ちらりと向かい合って座っている黒髪を見ると、嬉しそうに窓の外を景色を眺めていた。
「…ほんとにつまらないからな」
「そう?楽しいけど」
「お前からしたらピクニックかなにかの気分だろうけど、」
「あ、ほら司令部が見えるよ」
聞いてないなこいつ、と外の景色を無邪気に笑って見るエンヴィーをぼんやり見つめる。
外の景色の建物も乗客もどんどん減って、広い草原しか見えなくなってきた。
リゼンブールに着くと、眠っていたエンヴィーを叩き起こして汽車を降りる。
駅員さんにあいさつすると、眠そうに後ろを歩くエンヴィーを見て首を傾げた。
「見ない顔だね?友達?」
「え、あぁうん」
適当に頷きながらエンヴィーを手を引っ張ってそこを離れた。
服装はちゃんと変えてあるから、怪しまれないだろうけど。
まずオレが友達を連れて来たこと自体が怪しい。
「すごいね、羊がいる」
「羊毛が名産物だしな」
「ふうん」
広い草原に放された羊を見ながら向かったのは、母さんと過ごした家のあった場所。
いまはもう形はないけど。見たいというのならしょうがない。
このためだけにわざわざ来たのかと呆れていると、握られた手を振り解くタイミングを失ってしまった。
「…ここ?」
「あぁ」
少し遠くに見える、真っ黒に焼けたそれを見てぽつりと呟く。
懐かしいな、とぼんやり思った。
あの日からこうやって眺めるのは初めてかもしれない。
ただじっと黙ったまま見ているエンヴィーを見上げると、にこり、と微笑まれる。
「…強くなったね」
「は?」
「はい、次行くよー」
「お、おい次ってどこだよ」
「幼馴染の家」
なんだか分からないうちにぐいぐい手を引っ張られて、困惑したまま見上げる。
今なんて言ったこいつ。
「…幼馴染って」
「ウィンリィちゃんのとこ」
「はぁ!?行けるわけないだろ!」
「いいじゃん、バレないし」
「そういう問題じゃない!」
ホムンクルスだということはたしかにバレない、だろうけど。
でもだからってそれはおかしい。
なんでお前まで来る必要があるのか、とか。
身内の家に敵を行かせるわけないだろ、とか。
言いたいことはいくらでもあるのに、ただ空回り気味に呼吸をしながらずるずる引きずられていく。
「で、お家どこ?」
「方向逆だばか!ていうか行かなくていい!」
「なんで?」
「逆にこっちが聞きた、うわ!」
ぐい、と引っ張られたかと思うと、くるりと向きを変えて歩き始めた。
少し痛む手首に、放せばか、と振り解こうとしても力の差は圧倒的。
手首を握られたまま、こっちかなあっちかな、とうろうろする。
「そこ右!機械鎧の看板あるだろ!」
「あ、ほんとだ」
「もういいから放せってば!」
「はいはい」
見慣れた家の前に着くと、何の躊躇いもなく扉をノックしやがった。
わんわん、とデンが得体の知れない気配に吠えるのが聞こえる。
がちゃ、と扉が開くのと同時に、デンがエンヴィーに襲い掛かった。
「はいはい…あらエド?どうしたのよ」
「お、おう、久しぶり」
後戻りはもうできない。
へらへらと笑いながらデンとじゃれているエンヴィーにちらりと視線を向けた。
デンは噛み付こうとしているけれど、エンヴィーは逆に弄ぶようにそれをひらりとかわしていく。
「…あなた誰?」
「おチビさんのお友達です」
「友達?あんた友達なんか居たんだ」
「…う、うん」
オレだって友達くらいいるぞ、と泣きそうになりながら胸を張ってみた。
婆っちゃんもウィンリィもこいつのことを微塵も疑わず家に入れた。
紅茶とお菓子を出した後、ふたりで物珍しそうにエンヴィーを眺める。
気にしていないようにエンヴィーも見つめ返して、ふうんと呟いた。
おチビさんの幼馴染ってこんな人か、と思っているに違いない。
「で、エドは機会鎧壊したの?」
「いや、壊してないけど…」
「はぁ!?じゃなんで来たの?」
「こ、こいつが行きたいっていうから」
嘘は言ってないぞ、とちらりとエンヴィーを見上げる。
お前のせいなんだからお前がなんとかしろ、と目で訴えたけれど伝わっただろうか。
期待はしない。
「アルは?来てないんだ」
「う、うん」
そうだ。アルはいまどうしてるんだろう。
無断でこっちに来たから心配してないといいけど。
ぼんやり思っていると、きょろきょろと辺りを見渡していたエンヴィーが不意に立ち上がる。
壁に掛けてある写真に気付いて眺めているみたいだった。
「…ウィンリィこれ貰っていい?」
「え、うんどれでもいいけど」
一瞬戸惑いながらウィンリィが頷いた。
嬉しそうに写真を一枚取ったエンヴィーに首を傾げて、なになに、とウィンリィが覗き込む。
途端にふたりでげらげら笑い出したのを、ぼんやり紅茶を飲みながら眺めた。
「この写真ね、婆っちゃんが撮ったのよ」
「あはは、可愛いねー」
何の写真だよ、と首を傾げながらお菓子を頬張って頬杖を突く。
人間なんか嫌いって言う割には仲良くしてるじゃないか。
紅茶で少し火傷した舌を気にしていると、ピナコが椅子から降りる。
「ほらウィンリィ、ついでだしエドの機械鎧見てやりな」
「あ、そうね。一応身長伸びてるかもしれないし」
「一応じゃない!伸びてるぞ!」
最後に見てもらったのはもう何ヶ月も前のこと。
それくらいの時間があればオレだって少しくらいは伸びてるはずだ。
むくれながらウィンリィの持ってきた椅子に座って、まずは右腕を見せる。
壊れていない機械鎧を見てもらうなんて初めてかもしれない。
ウィンリィの隣にしゃがんで、オレの手足を眺めていたエンヴィーが首を傾げる。
「…それどうなってんの?」
「あ、機械鎧知らない?簡単に言えば神経と接続して動かしてるの」
「ふーん…?」
「銃器を内臓することだってできるんだから!格好良いでしょ!?」
言いながら腕のあちこちの部品を説明するウィンリィに少し苦笑いする。
散々説明を聞いた後の感想は「痛そうだね」だけだった。
そりゃあなんとも言えないだろうけど。
「うん、足も大丈夫そうね」
「で、でも伸びてただろ!?」
「そうね、左足の機械鎧に支障がないくらいはね」
くすくすと笑うエンヴィーにむっとして、髪を思いっきり引っ張ってやった。
痛いいたい、と全然痛そうじゃないくせにわざとらしく言いながら頭を摩る。
本当にこいつは何をしに来たんだろう。
「で、エドは今日どうするのよ?」
「…どうするって?」
「どうせだから泊まったら?」
「いや、でもアルがなぁ…」
無断で来たし、もしセントラルを離れたことを知ったら心配するだろう。
一言くらい言ってくればよかった、とクッキーを頬張る。
不意にエンヴィーが屈んで「泊まればいいじゃん」と耳打ちしてきた。
そんなのできるわけがない。
お前一応敵だし、と言いかけると手で口を塞がれる。
「じゃあお世話になります」
「ちょ、」
にっこりと微笑むエンヴィーに慌てるけど、もう遅い。
なんでお前が、とぶつぶつ呟きながら睨むように見上げる。
どこか楽しそうにしているウィンリィとピナコに、まぁいいか、と思ってしまうけど。
「婆っちゃんのご飯美味しいから楽しみにしててね?」
「うん、ありがと」
にっこりと笑ったエンヴィーにウィンリィが頷く。
それからじっとエンヴィーを眺めて、
「こんなに綺麗な人がエドと友達なんて信じられないわ。雲泥の差よ」とか言いながらエンヴィーの長い黒髪を触った。
物珍しいのは分かるけど。
「おチビさんも十分可愛いと思うけど?」
「か、可愛い言うな!」
慌てて立ち上がりながら、いつもの調子で言ってしまった。
ウィンリィがきょとんとしてオレとエンヴィーを交互に見たのは言うまでもない。
久しぶりに食べた婆っちゃんの手料理にはたしかに感動した。
エンヴィーも美味しいと言っていたし、リゼンブールに観光するものがなくても
これだけはけっこう自信を持ってお勧めできる。
「ご馳走様でしたー」
「ね?婆っちゃん料理上手でしょ?」
「うん、ウィンリィも今度アップルパイの作り方教えてね」
「あはは、毎回味は違うんだけどねー」
片付けを手伝いながら楽しそうに話すふたりをぼんやり眺める。
まさかここまでエンヴィーがウィンリィ達と親しくなるなんて思ってなかったけど。
名前で、しかも呼び捨てで呼び合うほどだったか?
「あ、お風呂沸いてるから先入っていいわよ」
「おチビさん一緒に入る?」
「…絶対嫌だ」
ぷい、とそっぽを向きながらさっさと風呂場に向かった。
なんか不機嫌じゃない?と首を傾げたウィンリィの声は聞こえないふり。
なんだよ、と自分でも何がなんだか分からないまま呟いて、服を脱いでさっさと風呂に入った。
それから大体30分、くらい。
湯船に浸かりすぎたせいでぼうっとする頭のままリビングに向かうと、ウィンリィがいつもと違う髪型になっていた。
長い金髪を三つ編みにしている上に、椅子に座っているエンヴィーの後ろに立って黒い髪を同じように三つ編みにしている。
「…なにしてんだお前ら」
「あ、エド上がったんだ。いま髪の編みっこしてるんだけど」
どうせお風呂入るし、と言いながらやっと出来上がった三つ編みによし、と頷く。
男のくせに髪綺麗よね、とかなんとか言う声をぼんやり聞きながら、冷蔵庫からオレンジジュースを取り出した。
なにやってんだか、とそっぽを向くと、こちらを見てエンヴィーが首を傾げる。
「おチビさん髪濡れてるじゃん。拭いてあげる」
「やだ」
にこやかに歩み寄ったエンヴィーに背を向けて、がしがしとバスタオルで乱暴に髪を拭いた。
なに怒ってんの、と腕を引っ張られて椅子に座らされる。
丁寧に髪を拭きながら、ウィンリィと顔を見合わせたのが視野の隅に見えた。
やっぱり不機嫌だね、と思っているに違いない。
それからはあまり口を効かずにエンヴィーがお風呂に入って、ちょっとしたデザートを食べて。
布団に潜り込んでもなんだか寝れなかった。
なんか、もやもやする。
不意に扉の外から「おやすみ」と言うエンヴィーの声が聞こえた。
ウィンリィも婆っちゃんももう寝るのかな、とのそりと上半身を起こすのと、エンヴィーが部屋に入り込んできたのは同時だった。
目が会うと、起きてたんだ、となんでもないように言う。
「な…、なんでお前が来るんだよ!」
「え、だってお客用のベットそれしかないって」
ウィンリィやピナコさんと一緒に寝るなんてできないし、と言いながら布団に入り込んでくる。
広くないから密着してしまうのはしょうがないけど。
「てめぇなんか床で寝てろ!」
「あはは、酷いなぁ」
気にしてないように笑うエンヴィーに背中を向けた。
ちょっとした沈黙の後、まだ少しだけ湿っている髪を撫でられる。
「ねぇ、なに怒ってんの?」
「…」
「ずっと不機嫌だったじゃん」
「…ずっとじゃない」
むくれて言うと、じゃあ今はなんでかな、と子供に言うみたいに優しく聞かれた。
なんでって言われても。
「…なんか、むかつく」
「ん?」
「お前楽しそう、だったし」
もごもごと口篭りながら言うと、きょとんとしたようにエンヴィーが首を傾げる。
楽しんだら駄目なの、と言われた。
そうじゃない、けれど。
「ウィンリィとよく話してたし」
「え?うんまぁ」
「髪触り合ったり」
「そりゃしたけど」
不思議そうに言われて、なんだか自分だけが変な感情を抱いていることに恥ずかしくなってくる。
ちょっと間があってから、エンヴィーがへらりと笑った。
「もしかしてヤキモチ?」
「…」
「あ、そうだったんだ」
実際自分だけ蚊帳の外みたいだったし。
いつもより構ってもらえなかったし。
柄にもなくそうぶつぶつ言っていると、肩を掴んでぐいぐい引き寄せながら向かい合う体勢にさせられた。
ぎゅう、と苦しいくらいに抱き締められる。
「そんなことで嫉妬してたの?かわいー」
「…だって」
「ウィンリィとはただのお友達だよ」
好きな人間はおチビさんだけ、と言われた。
むう、とむくれながら「そういうことにしてやる」と小さく言う。
だって人間が嫌いって言って、あまり接しようとしないエンヴィーが初対面の相手に楽しそうに話してたんだ。
そりゃ少しは疑うに決まっている。
「じゃあおチビさんはもっと特別ってことだよ」
「…特別?」
「うん。特別」
たしかにそういうことかもしれないけど。
そう思うと微かに優越感が沸いてきて、素直にエンヴィーに擦り寄ってみた。
あぁそうふうん、と言いながら微かに顔が綻んでしまう。
「はい、誤解が解けたんだから満足?」
「…うん」
「じゃあもう寝ないと。明日お昼までに帰らないと弟くんがあちこち探し回っちゃうよ」
それは今日の時点で有り得たけど。
まぁいいか、とぎゅうぎゅう抱き込まれながら目を瞑って、深く息を吸い込む。
もしアルがオレのこと探してたらどうしよう、とぼんやり思ったのを最後に意識が無くなった。
ゆさゆさ揺さぶられて目を開けたら、なんとも言えない表情のウィンリィがへらりと笑った。
おはよう、と言われて素直に「おはよう」と返しながら、身動きが上手くできないことに首を傾げる。
身体が重い、と見てみれば、至近距離にエンヴィーの寝顔があった。
数秒の間硬直する。
そうだ、たしか昨日の夜。
「…あんた達ほんと仲良いわね」
「ち、違う!これはこいつが…!」
慌てて腕の中から擦り抜けてベットを降りた。
なんでもいいけど早く仕度しなさいよ、と言われて恥ずかしさに唸りながら時計をちらりと見る。
うわ、もう9時か。早くセントラルに戻らないといけない。
「おい、エンヴィー」
「うー…」
「うーじゃない、早く起きろ!」
やだやだねむたい、と呂律の回ってない声が聞こえて溜め息を吐く。
まぁいいか、と先に部屋を出てリビングに向かうと、もう朝食も準備されていた。
せっせとコップにジュースを注いでいたウィンリィが、腰に手を当ててじっとオレを見つめる。
「たまには用事無くったって戻ってきなさいよ?ちゃんと連絡もしてね」
「んなヒマ無いってば…」
「なに言ってんのよ、何ヶ月も連絡無いから心配するに決まってるじゃない!」
いい?と有無を言わさない口調に仕方なく頷いた。
急に帰ったと思えばいつも機械鎧を壊しているんだ。たしかに心配させてるんだろう。
また壊したわね、と怒りながらも本当は危険な目に遭ったのか心配しているのは知っている。
「あ、そうそう。聞きたいことがあるんだけど」
「なんだよ」
「エンヴィーってエドのこと好きだったりするのかな?」
「はぁ!?」
不意にそんなことを言われて思わず顔が熱くなった。
ただの友達だと言ったし、さっき一緒に寝てたのは…しょうがないと思ってくれていいのに。
何も言えないまま慌てていると、なんでもないように「だって」と呟いた。
「だってエドがお風呂入ってる間さ、おチビさんのこと色々知りたいって」
「…へ?」
「写真もエドが小さい頃の欲しいって言ったし。ずっとあんたの話するから惚気られてる気分だったわよ」
苦笑するウィンリィとは反対に、オレはぽかんとして見つめ返す。
てっきり仲良くなって他愛無い話をしているんだと思っていたのに。
「エドのこと心配してたわよ?なんでもいいけど人に迷惑掛けないの!」
「う、うん」
頷いていると、目を擦りながらのろのろ歩いてきたエンヴィーが首を傾げた。
オレとウィンリィを見比べた後、楽しそうだね、と少しむっとしたように言われて苦笑する。
「ほら、坊主共も飯食べてさっさと仕度しな!」
「あ、ピナコさんお世話になりました」
「いつでも遊びにおいで。こんな豆粒だけど仲良くしてやっとくれ」
「はーい」
「誰が豆粒だ!」
反射的に反応すると、けらけらエンヴィーに笑われた。
ぐいぐい髪の毛を引っ張って椅子に座らせて、朝食を食べる。
昼になるまでにはセントラルに戻りたかったから、食べ終えるとすぐに着替えないといけない。
時間も無いから、簡単に食事を済ませてさっさと着替えた。
「何度も言うけど、戻るときはちゃんと連絡するのよ?」
「おう、分かってるってば」
「エンヴィーもいつでも遊びにきてね」
「うん。写真ありがとね」
そういえば写真ってどんなのだったんだろうと見上げるのと、遠くで汽車がやってくる音が微かに聞こえたのは同時だった。
うわやばい、と慌ててエンヴィーの腕を引っ張って走り出す。
急げば間に合うだろう。
「じゃあな!また機械鎧頼むぞ!」
「壊したら許さないんだからね!しっかりしなさいよ!?」
それは聞こえないふりで、さっさと駅に向かって走り出した。
ちらりと振り向きながら、エンヴィーがぽつりと呟く。
「いい人達だね」
「…まぁな」
「また一緒に来てもいい?」
「その時にならないと分からないな」
「えーなにそれ?」
意外と楽しかったし、悪くは無いけど。
そう思いながらギリギリで汽車に乗って、やれやれ、と息を吐く。
動き出した景色をぼんやり眺めながら、そういえば、とエンヴィーに視線を向ける。
「なぁ、オレの写真ってどんなのだよ?」
「ん?これ」
「もしかしてアルとふたりの…はぁ!?なんだよこれ!」
「あはは、可愛いでしょ?」
「よこせ!んなもん捨ててやる!」
「やぁだ」
ぎゃあぎゃあ騒ぐ声にうるさい、と周りの乗客に怒られてしまった。
仕方なく大人しく座って、窓の外を眺める。
遠くなっていく草原に、でもまぁ楽しかったかな、と呟くとエンヴィーも嬉しそうに頷いて、窓の外を見た。
セントラルに戻って、いつの間にか北から戻ってきていたアルフォンスに少し怒られたこと。
報告書の提出を忘れてて、すぐに司令部に走って向かったこと。
時々からかうように、お腹を出して寝ているオレの写真を見せ付けてくるエンヴィーと取り合いをしたこと。
忙しい二日間になったけれど、そんな感じでオレの里帰りは終わった。
メイントップにはなにもない
書きたいことは書けてないくせに無駄に長いんです長いんです